「CLIE社への抗議」発表後の経緯、及び舞台『メゾン・マグダレーナ』上演中止を受けて
2018年11月28日、舞台『メゾン・マグダレーナ』上演に関する抗議文「CLIE社への抗議」を発表しました。その後、12月13日にCLIE社より同舞台作品の上演中止が告知されました。
本記事では、11月末より中止に至るまでの大きな動き、および上演中止発表を受けての筆者(中町)の意見をまとめます*1。既にSNS等で多くの方々から本件に関する声が上げられているところではありますが、今後、類似の事態が生じた場合を考え、抗議文および本記事を記録として残しておきます*2。
2018年11月末~12月13日(上演中止発表)までの経緯
2018. 11. 30
- 「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(以下「なくす会」)より、「舞台『メゾン・マグダレーナ』上演に関してのCLIE社への公開質問」発表
- 上田麻由子氏著、『Webちくま』内コラム『2・5次元通信』「最終回・それでも幕は上がるので」にて、『マグダラなマリア』シリーズと『メゾン・マグダレーナ』上演に関する問題、及び「CLIE社への抗議」への言及
2018. 12. 09
- 「なくす会」により、『メゾン・マグダレーナ』上演中止・再検討を求めるウェブ署名活動が開始される(終了時点で596名の賛同)
キャスティングを餌にしたセクハラで、実刑判決を受けた演出家を起用した舞台『メゾン・マグダレーナ』の上演中止、再検討を求め、署名活動を開始致しました。設定変更で非公開でも署名できます。ご賛同、またRTなどで情報拡散のご協力を宜しくお願い致します。 #MeToo https://t.co/0kGorPc8eH
— 演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会 (@nosekuhara) 2018年12月9日- 署名サイト:http://chng.it/qCGqGsvS
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- 参考:署名趣旨に関し、「なくす会」公式ツイッターアカウントからのツイート
メゾン・マグダレーナの件について、個人的には色んな考えがあって、議論されることも、とてもとても大切なことだと私達は思います。
— 演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会 (@nosekuhara) 2018年12月12日
私達は基本的に「被害者の視点で」活動している団体です。再犯を防止する観点や、更生プログラム、様々な視点から見れば色んな考え方があるのは当たり前だと思います私達は代表の知乃がキャスティングを餌にしたセクハラを受け、その賠償金で設立された団体です。彼女は今も街で似た人を見かける度に、体が震えると言います
— 演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会 (@nosekuhara) 2018年12月12日
私達は、児童に性暴力を行った教師が教壇に戻れないように、キャスティングを餌にセクハラをした演出家は、舞台に戻ってはならないと考えます
- 参考:署名趣旨に関し、「なくす会」公式ツイッターアカウントからのツイート
2018. 12. 13
- CLIE社、『メゾン・マグダレーナ』公演中止を発表
- 中止告知文:https://www.clie.asia/mm_oshirase.html
- 告知文はCLIE社公式ウェブサイトに掲載、公式ツイッターアカウントにて告知
(お知らせ)
— CLIE (@clie_seisaku) 2018年12月13日
『メゾン・マグダレーナ』の公演を中止致します。詳しくはこちらをご覧ください。https://t.co/xYB9WvUKIj
ご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
- 参考
- 『メゾン・マグダレーナ』公演ウェブサイトは2018. 12. 24時点で残存(CLIE社公式サイトトップページからは、公演サイトへのリンクはなし、公演中止のお知らせへのリンクはあり)
- 2018. 11. 24発表の『メゾン・マグダレーナ』上演に関する吉井氏声明文はCLIE社公式サイトより削除済み、右記アーカイブで閲覧可能:http://archive.is/x63bK
上演中止を受けて
- 比較的早い段階で中止という具体的な措置があったことに関しては、よかったと考えています。
- しかし、中止に関して、判断に至った経緯や、演劇における性犯罪・パワハラ・セクハラをめぐる問題に関するCLIE社の見解について説明が一切なかったことは、企業としての社会的責任を果たしている態度とは言い難いものです。
- 抗議文において要求した「社としての見解の表明」「性犯罪の問題に対し、具体的な対策を取ること」に関する対応・応答がなかったことは、極めて残念に思います。
- 上演中止発表によって、事態は一応の収束を見た形になってはいますが、CLIE社は改めて、公演決定から中止に至る経緯、及び社としての意見に関する説明を行うべきであると考えます。
- 加えて、今回の件は、根本的には特定の個人・団体だけの問題ではなく、演劇業界における性犯罪・パワハラ・セクハラに広く関わる問題であることを改めて強調したいと思います。
- だからこそ、単に上演中止や湯澤氏の降板といった、特定の作品・人物・団体等に関する処置だけをもって解決とすべきではないと考えます。
- 抗議文において述べた通り、本件に関して一番に考えるべきは、作品をとりまく場や仕組み自体の改善です。
- この点に関連して、「なくす会」によるミュージカル『クリスマス・キャロル』への公開質問に関し、主催者・スポンサーから返答がなかったことは大きな問題であると考えます。
- 同ミュージカルは『マグダラなマリア』シリーズ及び『メゾン・マグダレーナ』と同様に、湯澤幸一郎氏が強い権限を持つ立場(脚本・演出・作詞・音楽・出演)を務めています。
最後に、抗議文へ賛同頂いた皆様、また抗議文を共有頂き、本件について議論・行動して頂いた皆様に深く感謝いたします。